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【柔道整復学科コラム】運動学の観点から見た柔道

こんにちは。柔道整復学科の木野田です。

今回は「柔道整復師」という資格名にも入っている「柔道」についてのお話です。

柔道について詳しく知らない人でも、試合では「一本取ったら勝ち」というルールは知っているのではないでしょうか。

さて、柔道整復師の大学や専門学校では「柔道」の授業が必ずあります。
未経験者でも修得できる「礼法」「受け身」が中心になるので、柔道経験がなくても心配はいりません。
しかし、国家試験に先立って行われる認定実技審査で柔道の「技」も審査項目としてあるため、「技」の修得もある程度必要になってきます。

柔道の技には「投げ技」「抑込(おさえこみ)技」「関節技」「絞(し)め技」などがあります。
そんな柔道の技の技術や原理を科学的に考えてみようというのがこのコラムです。
少し仰々しくはなってしまいますが、今回は「投げ技の運動学的アプローチ」がテーマです。

大前提として「投げ技とは相手のバランスを崩す(崩し切る)一連の動作」であると私は考えています。
このバランスの崩し方に効率や再現性を突き詰めていくと、一つの投げ技の習得に至るのではないでしょうか。
この投げ技の原理を運動学的に言い換えると、「支持基底上の重心線が支持基底の辺縁に移動するとバランスが崩れ、支持基底外に移動すると立っていられなくなる」となります。
この原理は、柔道だけではなく他のスポーツや日常生活においても成立します。
この支持基底と重心線の関係を、柔道では、「相手を投げること」に利用したわけです。

支持基底とは、両足底とその間の部分を合計した面積をいいます。
下の図でいうと、足の裏とグレーで網掛けしてある部分の面積です。
基本的に、この面積が大きいと安定します。(図1参照)

図1

次に、「重心」とはどの方向からも体のバランスがとれる点のことをいい、重心を通る垂直線を「重心線」といいます。
この重心線は支持基底の中心にあると安定し、支持基底の辺縁に寄るほどバランスを崩し、支持基底の外にあると立っていられなくなります。(図2参照)

図2

実際の動きでは、重心線が支持基底の外へ移動するときには足を踏み出す、上体を反らすなどをして、転倒を防ぐため、姿勢を維持させるように体が反応します。

それではこの原理を理解した上で、柔道の技で相手を投げるためにはどうすればよいのか。
相手を押す・引く・回り込むなどの動きで相手のバランスを崩せばよいのです。
※実際には重心の「高さ」も加わるのでより複雑となりますが、この支持基底や重心線の考え方は変わりません。

バランスが崩れると姿勢を元に戻そうとするので、「姿勢を戻させない」「姿勢を戻そうとする動きを利用する」と相手を投げることができるのです。理屈ではわかっていても相手も同じように考え、動いていますので簡単にはいかないですが…。
お互いがバランスを崩そうと押したり引いたりしている中で、「自分は安定、相手は不安定」の瞬間に技をかけるのです。
技をかけるとは「足を引っかける」「足を払う」「腰に乗せる」などの動作のことをいい、それぞれ名前がついています。
有名どころだと「背負投」や「大外刈り」は聞き覚えがあると思います。

いかがでしたか。柔道の投げ技の秘密が少しは解ってもらえたのではないでしょうか。
柔道では投げ技を「崩し」「作り」「掛け」と呼んでいますが、運動学的に考えると上記のようになるわけです。
次回は、寝技を科学的に見ていきたいと考えています。

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