【鍼灸学科コラム】なぜ学校で幅広く病気の勉強をするのか?
よく学生さんから「なぜ鍼灸では治せそうにない病気のことも勉強しないといけないの?それも鍼灸師に必要なこと?」と質問を受けることがあります。
その時は必ず「絶対に必要!」と返答しています。
主な理由は2つ。
1つ目は「国家試験に出題される」から、
2つ目は「医療機関で対応が必要な疾患を見抜く知識」が必要となるからです。
今回は2つ目の「医療機関で対応が必要な疾患を見抜く知識」について深堀りしてみます。
鍼灸師が患者さんを診るにあたりどのレベルまで知識が必要なのか?
例として「頭痛」をあげます。
頭痛とは、頭部の一部や全体、後頭部と頸の境界および眼の奥の痛みの総称で、風邪を引いたときや長時間のパソコン・スマートフォンの操作、飲酒、かき氷など冷たい物を食べたときなどでも起こる症状で、多くの方々が経験したことがあるのではないでしょうか。
頭痛で悩む患者さんに対して、鍼灸師は何気なく鍼や灸をしているのではなく、下記のことを熟知して施術をしています。
①頭の正常な構造・機能 (主に1・2年生で学習)
・筋肉・骨・血管・神経の構造 (解剖学)
・筋肉の収縮・血液の循環機能 (生理学)
・筋肉・骨・血管・神経に関係する経穴(ツボ) (経絡経穴概論)
②頭痛の疾患の種類・特徴 (主に2・3年生で学習)
・頭痛の概念・病態生理・原因疾患・治療など (臨床医学総論)
・各疾患の疫学・症状・診断・治療・経過など (臨床医学各論)
・各疾患の西洋医学・東洋医学的な診かた、治療方針や治療経穴 (東洋医学臨床論)
さらに、患者さんの診るうえで重要なポイントが2つあります。 (主に2・3年生で学習)
1つは、鍼灸適応疾患を診る知識
鍼灸適応疾患には、ズキンズキンと脈打つような「片頭痛」、締めつけられるような「緊張型頭痛」、片眼の奥がえぐられるような激しい痛みの「群発頭痛」などがあります。これらの発生機序、痛みの特徴や症状を把握したうえで治療方針や治療経穴を決め施術します。
2つめは、医療機関で対応が必要な疾患を見抜く知識
鍼灸治療を行うにあたり、上記の頭痛との鑑別が必要な疾患には、くも膜下出血、脳出血、脳腫瘍などがあります。
実際のところ、くも膜下出血、脳出血は突然の激しい痛みやめまい、嘔吐などが起こるため鍼灸院に来る可能性は低いと思いますが、脳腫瘍は症状が徐々に進行するため、最初は原因がわからず鍼灸院に来る可能性があります。
鍼灸師にはこの「隠れている疾患、病気」を見抜く力が必要になります。
鍼灸師は、医師のように頭痛の原因となる「病気の診断」することはできません。
しかし「この頭痛、何かおかしい」と気づき、重篤な疾患の早期発見・早期治療につなげるために「適切な医療機関に紹介」するということが鍼灸師の重要な役割になります。
これが最初の質問の「なぜ鍼灸では治せそうにない病気のことまで勉強しないといけないのか?」の答えになります。
患者さんの健康のために、鍼灸師が「治療を行えるように必要な勉強をする」ことと同時に「適切な医療機関での治療や手術、投薬が必要な疾患を見抜くことができる」ように細かく勉強することが必要となります。
入学すると想像していたより勉強することが多いかもしれません。
そんな時は「ただ資格を取るための勉強」よりも「将来出会うかもしれない様々な患者さんのため!」と思って勉強したほうが患者さんから必要とされる素晴らしい鍼灸師になれるかもしれませんね!